はぁ、はぁ、もう疲れたよ。
こんなに長い階段を上らなきゃいけないなんて。
大丈夫だよ、プリンちゃん。
もう少しで神社に着くから。頑張ろうね。
うん、でも、帰りたいよ。
こんなに暑い日に階段を上るなんて、こさらんは何を考えているのかしら。
そうだね、暑いね。
あの人のことだ、何か考えがあるんだろう。
じゃあ、階段を上り切ったら、アイスを買ってあげるよ。
どう?
本当?じゃあ、頑張るよ。ありがとうスルメくん。
どういたしまして。さあ、行こうか。
(二人が階段を上り始める)
ねえ、プリンちゃん。今のプリンちゃんみたいに、
分子も階段を上ることがあるんだよ。
えっ、分子も階段を上るの?どういうこと?
分子のエネルギー準位間で電子が移動することを電子遷移と言うんだけど、
それはまるで分子がエネルギーの階段を上ったり下りたりするみたいなものなんだ。
エネルギー準位?それって何?
エネルギー準位
エネルギー準位とはね、分子が持つことができるエネルギーの量のことなんだ。分子は原子が結合したものだけど、原子には電子があるでしょ?
うん、そうだね。
分子軌道?原子軌道なら聞いたことがあるわ。
原子軌道と電子軌道間の遷移
さすがプリンちゃん、
原子軌道にはs,p,d,fという種類があってね、
それぞれ形や大きさや方向性が違うんだ。
s軌道は球形で一つしかなくて、p軌道はバランス型で三つあって、d軌道は四つ葉型やドーナツ型で五つあって、f軌道はもっと複雑な形で七つあるんだ。
この軌道が電子が移動できる道みたいなものかしら。
電子が移動するというのはね、
分子が外からエネルギーを受け取ったり、
放出したりするときに起こるんだ。
例えば、分子が光を吸収したり、発光したりするときにね。
光を吸収したり、発光したり?
なるほどね。じゃあ、分子が発光するときはどうなるの?
へえ、すごいね。でも、どうして分子は特定の光を吸収したり、放出したりするの?
それはね、分子の構造や結合の種類によって決まるんだ。
分子の構造や結合の種類によって、
分子軌道の形やエネルギー準位の間隔が違うからね。
例えば、カルボニル基という構造を持つ分子は、
紫外光や可視光を吸収して電子遷移することが多いんだ。
分類 | 説明 | 例 |
---|---|---|
s-p遷移 | s軌道からp軌道への遷移 | カルボニル基 |
p-d遷移 | p軌道からd軌道への遷移 | 金属錯体 |
d-d遷移 | d軌道からd軌道への遷移 | 金属錯体 |
f-f遷移 | f軌道からf軌道への遷移 | ランタノイド |
f-d遷移 | f軌道からd軌道への遷移 | アクチノイド |
電荷移動遷移 | CT遷移とも呼ばれる。電荷を持つ原子や基から別の原子や基へ電荷が移動するような遷移 | ヨウ素化カリウム |
なるほどね、これが電子軌道間での遷移なのね。
分子軌道とエネルギー準位
それでね、原子軌道が重なり合って分子軌道になるときに、
エネルギーが上がったり下がったりするんだ。
エネルギーが上がるのを反結合軌道と言って、
電子が入ると分子が不安定になるんだ。
エネルギーが下がるのを結合軌道と言って、
電子が入ると分子が安定になるんだ。
分類 | 説明 | 例 |
---|---|---|
結合性軌道 | 電子が入ることで原子同士の結合を強める軌道 | σ軌道,π軌道 |
非結合性軌道 | 電子が入っても結合に影響しない軌道 | n軌道 |
反結合性軌道 | 電子が入ることで原子同士の結合を弱める軌道 | σ*軌道,π*軌道 |
じゃあ、電子は結合軌道に入りたいってこと?
そういうこと。でもね、結合軌道にも種類があって、
σ軌道とπ軌道というものがあるんだ。
σ軌道は原子核の間を通る軌道で、
π軌道は原子核の上下にある軌道で、
σ軌道の方がエネルギーが低いんだ。
なぜ?原子核の間の方が距離が近いわね。
それはね、σ軌道の方が原子核に近いから、引力が強いからだよ。だから、電子はまずσ軌道に入って、それからπ軌道に入るんだ。
ふーん、なるほどね。
階段上るときも二段飛びするのは大変だものね
そうだよ。だから、電子の数が多い分子では、すべての電子が結合軌道に入れないこともあるんだ。その場合は、非結合性電子対というものができるんだ。
非結合性電子対って何?
非結合性電子対とはね、
分子軌道に入らないで原子軌道に残った電子のことで、
分子の形や性質に影響するんだ。
例えばさ、
カルボニル基の酸素は非結合性電子対を持ってるんだけど。
またカルボニル基が出てきたわね。それでどうなるの?
それでね、カルボニル基は紫外光や可視光を当てると電子遷移を起こすんだけど、
その種類は非結合性電子対からπ*反結合軌道への遷移なんだ。
π*反結合軌道って何?
π*反結合軌道とはね、
π結合軌道よりも高いエネルギー準位にある反結合軌道のことで、
*はアスタリスクと言って反結合を表す記号なんだ。
じゃあ、非結合性電子対から
π*反結合軌道への遷移ってどういうこと?
それはね、原子核の上下にある非結合性電子対が光を吸収してエネルギーを得て、
原子核の間を通るπ*反結合軌道に飛び移ることを言うんだ。
そういうことなのね。あれ?
非結合性電子対からπ*反結合軌道への遷移がないわ。
そう、非結合性電子対からπ*反結合軌道への遷移はn-π*遷移という種類に分類されるんだ。nは非結合性電子対を表す記号で、π*は反結合π軌道を表す記号だよ。
n-π*遷移って他にもあるの?
そうだよ。例えばさ、アルコールやアミンなどの分子にも非結合性電子対を持つ原子があって、それらもn-π*遷移を起こすんだ。でもね、カルボニル基の場合は、反結合π軌道が低いエネルギーにあるから、可視光の範囲で遷移が起こるんだ。
反結合π軌道が低いエネルギーにあるってどうして?
それはね、カルボニル基の酸素と炭素の原子番号が違うから、
原子軌道の重なりが悪くなるからだよ。
原子軌道の重なりが悪いと、
分子軌道のエネルギー準位が近くなるんだ。
電子遷移と薬学との関連性
なるほどね。分子の電子遷移って面白いね。でも、これってどうして薬剤師国家試験に出るの?
それはね、
分子の電子遷移は薬物の作用や分析に関係するからなんだ。
例えば、薬物が体内で代謝されたり、
結合したりするときには、
分子の構造や結合が変わるから、
電子遷移も変わるんだ。
それによって、薬物の効果や副作用が変わったりするんだ。
へえ、そうなんだ。
じゃあ、分子の電子遷移を知っておくと、
薬物の作用や分析がわかりやすくなるってこと?
そういうこと。
分子の電子遷移を利用した分析法もあるんだよ。
例えば、紫外可視吸収分光法というのは、
分子が吸収する光の波長や強さを測定することで、
分子の種類や濃度を調べる方法なんだ。
すごいね。分子の電子遷移って、
色々なことに使えるんだね。
そうなんだよ。
だから、薬剤師国家試験では、
このような基礎的な知識を問われることがあるんだ。
なるほどね。霊夢はすごいね。私も勉強しなきゃ。
そうだね、ちょうど神社についたみたいだし、
今日はこれくらいにしておこう。
プリンちゃんお疲れ様。アイスは何にしたい?
もう、限界、アイスはバニラにしたいな。
アイス代さ、こさらんに請求しない?
それは良いね、僕らをこれだけ働かせたんだ。
しっかり報酬はもらわないとね。
以上がエネルギーの階段と電子遷移についての解説でした。参考になりましたでしょうか?
もしもっと詳しく知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
・薬剤師国家試験 第107回 問91 過去問解説 - e-REC | わかりやすい解説動画!
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